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コラム 「日本の常識、タイの常識」
ポーホック卒業証明書
「その写真は、小学6年生らしくありません!」



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これも、私の体験談です。

タイに住んでいらしゃる方でしたら、タイ語の検定試験「ポーホック」はご存知だと思います。

英語検定試験と同じように、タイ語にも検定試験があります。
ポーホックとは、小学校6年生という意味で、要するに、この試験に合格するとタイの小学6年生と同程度のタイ語の語学力があるということが保証されます。

私の場合は、検定試験ではなく、実際にタイ人と一緒に、コーソーノー(直訳すると学校外教育、具体的には公立の社会人学校といったところ)でタイ語を勉強しました。
一年半で、小学校6年分を勉強しますので、基本的には、すでにタイ語の読み書きができる人でなければ一年半で卒業することは難しいです。もちろん、授業は全てタイ語です。

最初の一年は、一人で勉強しておりましたが、最後の半年はクラウスさんというドイツ人と一緒に勉強しました。(入学試験に合格すれば、本当は半年間の勉強で卒業できます。私の場合も試験には合格しましたが、敢えて一年半かけてゆっくりと勉強しました。ようするに、暇人だったということですが)そして、彼と一緒にめでたく卒業できたのですが、このときのエピソードです。

卒業証書を作成するので、写真を提出してくださいとなりました。
外国人である私とクラウスさんは、もちろん、ネクタイをした正装の写真を提出しました。

ところが、この写真にクレームがつきました。

先生「これは、 小学校6年生の卒業証書 のための写真です。
   ネクタイをした写真は小学6年生らしくありません。
   礼儀正しくありません。」

私 「え?」

先生「白いシャツを着て、ノーネクタイで撮り直してください。」

このとき私は先生の言っていることに疑問を感じていましたが、最後の最後で、もめてもしかたないので素直に、

私 「分かりました。」

と承諾して、撮り直してきました。
私の持っている白いシャツは、長袖のボタンダウンシャツでしたが、白いシャツであれば何でも良いのだろうと自分なりに解釈して、写真を取り直しました。

私 「写真を撮り直しました。どうぞ。」

先生「これも、小学6年生らしくありません。長袖シャツは小学生らしくありません。
   礼儀正しくありません。」

私 「は?」

ちょうど、このとき私の隣にクラウスさんがいて、先生に質問しました。

クラウス「では、小学6年生らしいとういう服装はどんな服装なのですか?」

先生「白い半袖シャツ。
   眼鏡をかけてはいけません。
   ポケットにペンを刺してはいけません。」

と言いました。
私は、この先生の言葉に唖然として、何も言う気にはなれませんでしたが、さすがにクラウスさんはヨーロッパ人です。

クラウス「そんなに細かな規則があるなら、
     どうして、最初から言ってくれないんですか。」

そうですよね。最初から規則を知っていれば二度も三度も写真を撮り直す必要はありません。でも、このとき私の頭の中には、

この先生は、40才過ぎの外国人に向かって、
「小学校6年生の卒業証書の写真なのだから、小学生らしい格好をした写真でなければいけません。 長袖シャツも、眼鏡もペンも礼儀正しくありません。」
と言って、何も感じないのだろうか。

という疑問はありましたが、ここで腹を立てて、喧嘩したのでは、せっかくの勉強が無駄になってしまうのですから、怒りをこらえながら、

私 「でも、私は、そんな、小学6年生の半袖シャツは持っておりません。
   どうすれば、よいのですか。」

と聞いてみたところ、

先生「写真屋さんでシャツを貸してくれますよ。」

そうして、私は三度目の正直で、写真屋さんに写真を撮りに行きました。昔からの知り合いなので、この話しをして、「小学生の白シャツはありますか。」と尋ねたところ、本当に呆れた顔をしていました。

やはり、タイ人にとっても、呆れた話しなのでしょうね。

そして、その間の抜けた 小学校6年生の正装をした40才過ぎのおっさんの写真 が出来上がりました。その写真を持っていったところ、さすがに今回は、何も言われずに、黙って写真を受け取ってくれました。

やっと一段落して、後は卒業証書が出来上がるのを待つだけとなりました。


ある日、コーヒーブレイクで、クラウスさんと雑談をしているときに、

私 「そう言えば、あなたの写真はどうでしたか。」

と聞いたところ、

クラウス「半袖シャツは着たけど、眼鏡をかけている写真でした。
     何も言わずに受け取ってくれましたよ。」

とのことでした。
しかし、彼の顔を見て、私はふと、またまた疑問が湧いてきました。

私 「あなたは、 口ひげを生やしていますよね。
   先生は、 ”口ひげは小学生らしくないので、剃れ!” と言わなかったのですか。」

クラウス「ひげについては、何も言いませんでしたよ。」

二人して、大笑いをしてしまいました。

あれほど、厳しい規則を並べていた先生が、どうして最も小学生らしくないクラウスさんの口ひげについて、一言も言わなかったのでしょうか。

さすがに、先生に直接聞くこともできませんので、あくまでも私の推察ですが、

三段論法でいくと、
1. 今まで、先生の言ったことは、すべて校則に記載されている。
2. しかし、「口ひげを生やしてはいけない」という校則はない。
3. それは、小学生が口ひげを生やすことが不可能だからである。


とても考えさせられる体験でした。。。。。


後日談:
晴れて念願のポーホック卒業証書を受け取りました。
あれだけ苦労した写真の出来上がりを確認たところ、

指定された写真のサイズが証書のスペースより大きく、はさみでカットされていました。
おかげで、そで下の部分がカットされて、長袖なのか半袖なのか分からなくなっております。

わざわざ半袖のシャツを借りてまでして撮影したこの写真はなんだったのか。

本当に疲れた一件でした。



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