コラートマガジン タイの現地旅行代理店

コラム 「日本の常識、タイの常識」
入国管理局係員「あなたは、二日間の不法滞在となります」



[ホーム] . . . [日本の常識、タイの常識] . . . [二日間の不法滞在]

これは、去年(2002年)、私が実際に体験したことです。

最初、タイへ来たときには、タイでのビザの取得は日本より簡単だろうと思っておりました。しかし、今では、ここタイでは、ビザの取得が日本より難しいと思っております。

特に、タクシン首相になってからは、ビザの申請料も年々値上がりし、ワークパーミット(労働許可証)の申請料も同じように値上がりしました。

さて、話しを主題に戻しますと、この話しは、私がタイで転職をしたときのことです。

7月31日で前の大学との契約が満了になったので、8月1日から別の大学へ移ることになりました。
ビザの切れる一週間前、7月24日ごろに、新しい大学との契約書を携えて、バンコクにある入国管理局に行きました。コラートには、入国管理局がなく、4時間以上もかけてバンコクまで行かなくてはなりません。

そうしたら、入国管理局の係官に、

「職を変える場合には、まず前職のワークパミットを解約してから、その解約証を持って来なければ、次の新しい職でビザを申請することはできません。」

と言われました。
そこで、転職先の大学へバンコクから電話を掛けて、相談してみると、

「では、今から、コラートの労働管理局へ行ってきて、ワークパーミットの解約を申請してきます。そして、解約証をバンコクの入国管理局へファクスで送りましょう。」

となりました。
早速、大学の事務員の方が、コラートの労働管理局へ行ってくれましたが、管理局の答えは、

「前の大学との契約が切れるのが8月31日なのだから、契約の切れる前にワークパミットを解約することはできません。」

でした。

タイでは、ビザも労働許可も、雇用契約が切れる日と同じ日に、一緒に切れます。普通、同じ職を契約更新する場合、一週間前からビザの申請ができるので、何の問題もありません。
しかし、転職する場合は、そうは行きません。

つまり、

8月31日に朝一番で、コラートの労働管理局へ行って、ワークパミットの解約手続きを行う。
同じ日に、バンコクの入国管理局へ行って、次の職の契約書を持って行って新しくビザを申請する。

ということをしなければならないそうです。
バンコクに住んでいれば、何の問題もありませんが、コラートからバンコクまでバスで3時間強かかります。また、バス・ターミナルから入国管理局まではさらに1時間近くかかります。時間的にいって、同じ日に両方の手続きをすることは難しいです。

そこで、私が、入国管理局の係官に、

「じゃ、8月31日にコラートの労働管理局へ行って、ワークパミットの解約手続きを行って、9月1日にビザの更新に来てもいいですか。」


と尋ねたところ、

「それでも、構いませんが、貴方は二日間の不法滞在となりますので、一日に付き200バーツ、合計400バーツの罰金を払わなければなりませんよ。」

という回答でした。

「は?」

私は、この回答を聞いたときに、一瞬、自分の耳を疑いました。また、タイ語を聞き間違えたのだろうか。でも、やはり聞き違いではありませんでした。

しかし、良く考えてみると、なんか変だよね。

(7月31日で前職の契約が切れて、
8月1日から新しい職場との契約もあるし、
しかも、どちらも国立大学で、タイ国に奉仕する仕事なのに、
どうして、二日間の不法滞在なのだ。)

納得の行かない私は、そのまま黙り込むことにしました。
(タイでは、公務員を人前で怒って怒鳴ること(声を荒げる)ことは、絶対にしてはいけないことです。公務員侮辱罪という罪がタイにはあります。大学での公務員生活が長い私は、黙り込むのが一番よい手だと知っておりましたので。)

現実には、31日の24時にビザが切れて、次の日の朝9時に入国管理局へ行けば、まだ不法滞在は9時間だけですよね。それが、どうやって計算したら「二日間」になるのだろうか。
しかも、この事を、誰ひとりとして、不思議に思わないのだろうか。
この不法滞在の計算の仕方は、本当に不思議です。

その後、大学の職員の方に電話して、直接、入局管理局の人と話し合ってもらいました。同じ、公務員同士で、話せば、話しが早いと思ったからです。

結論は、
「31日にワークパーミットを解約して、宅配便(当日配達便)で送れば、不法滞在にならずに、ビザをあげましょう。」
となりました。

(なんだ、話しは簡単じゃないか。)
(驚いて損した)

となり、31日に大学の事務員の方に手続きをしたもらいました。
これで、すんなり行かないのが、やはりタイです。
前に座って相談に乗ってくれる人は、OKを出してくれたのですが、後ろに座ってサインをするだけのお偉いさんが、
「どうして、本人が申請に来ないのだ。とりあえず、21日間だけビザをあげるから、もう一度、 本人が申請に来い。

となってしまいました。
しかし、転職したばかりですので、仕事に慣れるまで忙しかったので、私は、ビザの切れる4〜5日前に、また入国管理局に行きました。

そうすると、

「なぜ、こんなに遅くに来たの。直ぐに来なければだめじゃないの。貴方の書類は、もう上の方(上階?)の手続きに回っているから来週また来なさい。」

「え?」

またまた、ここでトラブル発生です。
ビザの残りは、あと4〜5日です。来週では、またまた不法滞在になってしまいます。そこで、私は、

「でも、来週では、ビザが切れてしまいますよ。しかも、ビザの切れる日は週末で、ここも休みですよね。」

と言って、またまた黙り込み作戦に入りました。
担当の人も、最初はどうしたら良いのか分からないみたいで、他の人と「ああだ、こうだ」と話しておりましたが、私は、とにかく結論が出る前に騒ぐ(怒る)のは良くないことだからと、黙ったまま、沈黙のプレッシャーをかけ続けました。
ちょうどその時、担当係官の前を上司が通りました。すかさず、彼女が上司にこの問題を話しました。そうすると、

「じゃ、今、先客がいるから、少ししたら私の部屋へ来なさい。」

となりました。
担当係官と上役の部屋へ入って、係官の一通りの説明が終わったあと、上役の彼女(タイでは、公務員には、女性の管理職が多いです)が、一言。

「同じ公務員同士なのだから、助け合えばいいんじゃないの。今日、ビザをあげましょう」

鶴の一声で、問題は解決。

私はその日に、無事、めでたく、一年のビザを更新してもらいました。

どうして、この係官は、こんな簡単な話しを、わざわざ大げさに、「たいへんだ、たいへんだ」と騒いだのだろうか。

去年は、本当に疲れたビザの更新でした。
でも、いまだに「二日間の不法滞在」はどうしても納得のいかない事のひとつになっております。

後日談:その1
ビザが更新できたあと、コラートの労働管理局へ行って、この「二日間の不法滞在」のことを話したら、担当の係官が、
「私が良い方法を教えてあげましょう。」
と得意げに、教えてくれました。
「日本大使館へ行って相談すれば、一週間ビザを延期してくれるようタイの入国管理局宛に依頼書を書いてくれますよ。そうすれば、不法滞在にはなりません。」
とのことでした。
ちょうど、その後、別件で日本大使館へ行く用事があったので、担当の係官に聞いたところ、
「今までそんな依頼書は書いたことが無いし、書けません。」
とのことでした。
これは、労働管理局の係官が全くのウソを言ったわけではなく、国によって大使館の対応が異なるからです。国によっては、国民の個人的な問題であっても、国民のために助けてくれます。
でも、日本の大使館は、個人的な問題には一切、関知いたしません。


後日談:その2
実は、ノーンカーイで不法滞在の罰金を払った人の話しを聞いたら、向こうでは、
8月31日にビザが切れて、9月1日に出国してビエンチャンへ行ったら、
「一日の不法滞在」で罰金200バーツ
だそうです。
どうして、同じ国で、入国管理局の場所が違うだけで、不法滞在の日数の数え方が違うのだろうか。 またまた、今夜も眠れなくなってしまいました。(ちょっと古いですね。)



[ホーム] . . . [日本の常識、タイの常識] . . . [二日間の不法滞在]